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零―中邑あつし

零……1

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人は、どれほどの物を失くすことが出来るのだろう

         どれだけ失くせば0になれるのだろう

いつから、ボクの手はボロボロと物が溢れ落ち始めたのだろう……

二○二×年 七月

 「一体どうなってんだ!」
「皆、一斉に動き出しました! 東京は愚か、北海道、関西、中部、九州!」
「クソッ! 急げ! 手が空いてるものは全員、近くの現場へ迎え!」
「無理です! 数が多すぎます!」
「構わん! 行ける奴だけでもいい!」
「駄目です! 既に現場へ向かってるもので手一杯です!」
「なんとかするんだ!」
「なんとかって! どうするんですか! こ、こんなこと、どうして……」
「何でもいい! 考えてもどうにもならん! 取り敢えず、近くの現場へ向かうんだ!」
「り、了解!」
「本当に始めやがった! ちくしょう。どうなってんだっ! くそったれぇ!」
「碇さん、現場に付きました! 救援お願いします」
「気を付けろ仲川!」
「うわぁっ!」
「どうした? 仲川!」
「どうなってんだ……どうして、持ってるんだ……」
「おい! どういうことだ! どうした? 仲川!」
「何で……こ、こんな……う、うわぁぁぁーーーーーっ!」
「仲川! 何があった? おい! 仲川! 仲川ぁぁぁっ!」


序章

一・柚木

 二○一九年七月
 
 暖かい日差しが、瞼を重くする。眠くてたまらない。別に寝不足というわけでもなく、今日だって、昼過ぎにここへ来た。ただ、昼の校舎の屋上ってのは、人をどこまでも心地よく眠りに誘う。
「柚木くん。ねぇ、柚木くんってば!」
またか……、俺がこうして一番安らげる時間を、いつも誰かが邪魔をする。
そして、今日はこいつ。
「…………」
無駄だと分かりつつも、今までの心地いい空間からすぐに抜け出せず、柚木は瞼をきつく閉め、全身に日差しを浴びる。だが、無駄なものは無駄だ。ドスッ!
「……!」
声にならない声が出た。
腹部に強い衝撃が走る。昼に食った柏おにぎりが喉元まで上がってくる。
「ご、ごめん。大丈夫?」
自分が思ってる以上に柚木が苦しむのを見て、女は慌てていた。
その手には、先ほどの凶器と思われる手提げ鞄が両手にあった。
彼女は、両肩に届くほどの黒髪を、夏の風になびかせ、柚木を心配そうに覗き込んでいる。
「チサ、やりすぎだろ」
柚木は、腹を抑えながら声を振り絞った。
「だから、謝ってるじゃん。いつまで寝てるの? 学校終わっちゃったよ」
全く謝ってる態度とは思えないチサの仕草も、ついさっきまでの慌てようを思い出すと笑いが込み上げてきた。
その上、この体制からだと、否応なしに、短いスカートの中の白いショーツが目に入ってくる。痛み分けだ。
「なによ、ニヤけて、キモいんだけど」
チサは意表をつく柚木の笑みにバツが悪そうな顔をする。
「いや、てか、まだ昼すぎじゃねぇか。もうちっと寝かしとけよ」
「はぁ」
額に手をあて、チサが溜め息をついた。
「今日は、学校昼まででしょう。てか、柚木くん、学校に何しに来てるの? 一回も教室にも来ないで、屋上で寝てるだけ?」
「分かってんじゃん」
柚木の返事にチサはあからさまに呆れてみせた。
「あんたねぇ、だかっ」
「落ち着くんだ。ここが。一番」
チサが全て言い切る前に、柚木の言葉が遮った。
「そう」
落ち着くんだ。ここが。一番。そう言った柚木の目が余りにも悲しい目をしていて、チサは言葉を詰まらせた。
チサは柚木のこういった部分を放っておけなくて、つい、世話をやいてしまう。チサ自信、それを理解している。柚木は、何か他の高校生とは、どこか違う場所にいるように感じられた。それは、柚木本人の意思に反して。
柚木に対して相槌しかうてない自分がもどかしい。でも、それは間違っている。自分の場所がどうとか、自分で決め付けてしまうのは何か違うし、他人が決めることでもない。
「その、柚木くんは、屋上が一番落ち着く場所かもしれないけど、もっと、もっとたくさん、自分の場所があると思う。だから……」
言いかけて辞める。自分がどれだけ恥ずかしいことを言っているか、柚木のニヤけ顔で現実に引き戻されたからだ。
チサは、これまたあからさまに顔を赤くしてみせた。
「ああ、もう一つあったわ。俺の場所。こいつだ。ッ痛」
柚木は、言い終わると同時に口元の絆創膏を剥がしてみせた。ピリッとした痛みに、屋上の優しい風が柚木の口元を撫でる。
「なんで、そうなの男って。喧嘩ばっか」
また、あからさまに頭を抱えるチサに柚木は笑みがこぼれる。
「お前には、分かんねぇよ。けど、俺、バカだから、いろんなゴチャゴチャ面倒くせぇの抱えて悩むより、なにも考えず突っ走って殴り合ってると、それが楽しくて仕方ねぇ」
まったくろくでもないことを言っている。
殴り合うだの。それが楽しいなど。チサには全く理解できなかった。それに、今時リーゼントという時代錯誤な柚木の髪型は、それ以上に理解出来ない。
ただ、そう言っている柚木の顔は、とても無邪気で純粋だった。
「鞄、サンキュ」
チサの手から柚木は鞄を受け取ると屋上の出口へと向かう。チサは小走りに後を追い柚木の顔を覗き込んだ。
「アイス。食べたくない?」
これまた、あからさまにニヤけた顔で、チサが突拍子もないことを言うのだ。
「は?」
「アイス。私、バニラがいい」
「俺が金ないの知ってんだろ」
「いいよ。私が奢ったげる」
「何企んでやがる」
「人聞き悪いこと言わないで」
明らかに、チサが何か企んでいる事が見て取れたが、柚木は、ことさら奢りという言葉に弱かった。
澄んだ空から照り返す日差しと、夏の風が創り出した屋上の心地よさに別れを告げ、柚木は屋上を後にした。

 コンビニの駐車場でチサは子供のようにアイスを舐めている。柚木はアイスという気分でもなっかたらしく、缶珈琲を片手に持ち煙草を吸っていた。
「ねぇ。煙草っておいしい?」
チサは、柚木の口から出てくる煙を目で追っている。
「美味いって思うときもある。飯の後とか。でも、美味いとか以前に大概が吸わないとやってらんねぇ」
「分かんない」
「分からん方がいい。吸わないに越したことはない」
「お金ないくせにタバコは買うんだ」
チサが棘のある言葉で柚木に言う。別に未成年だからとか、そういうのではなく、柚木の現状を考えた上でだろう。
「これは、笹崎から1カートン貰ったやつ。それに、煙草代を浮かしたところで、家の借金はどうにもなんねぇよ」
「そうかもしれないけど。お父さん返せなかったら結局、柚木くんが……」
「メンドクセェの。親父の借金に振り回されんのは。いざとなったら、夜逃げでもなんでもすりゃいいだろ」
柚木がそう言うと、チサがあからさまに俯いた。
左手に持っていたアイスは、既に失くなり棒切れになっている一方、手持ち無沙汰な右手は、膝上のスカートをきつく握り締めていた。
柚木はそれを見て、バツが悪そうにフォローする。
「あぁ、まぁ、なんとかなるだろ。夜逃げは最終手段だから。その。……てか、お前、何かあったんじゃねぇの? 話」
柚木は、屋上での出来事を思い出していた。
昔は幼馴染ということもあり、よく一緒に遊ぶこともあり、家族ぐるみの付き合いも多かった。だが、ここ最近、学校では会話はするものの、一緒に帰るなど久しぶりだった。
「うん、あのね。別に企んでるとか、そういうのじゃなくて、私のお父さんがね、卒業したら家で鍛えてやるからって。それで、その……」
「それで、前原建設で働けと」
「うん。太ちゃん、あっ、柚木くんがよければ、進学も決まってないって言ってたし」
太ちゃん。その呼びかけに柚木は懐かしさが込み上げる。
柚木太成(ゆずきたいせい)で、太ちゃん。そして、前原建設の一人娘、前原千紗(まえはらちさ)。
……いつからだろう。チサがその名で俺を呼ばなくなったのは。
「いいぜ」
「へ?」
チサは、この柚木の答えがよっぽど予想外だったのか、間の抜けた声を上げた。
「なんつぅ顔してんだお前。だから、いいぜ。俺も卒業してから、どうすっか分かんなかったしよ。頭悪ぃし、それに、ガキんとき、お前の親父の働いてる姿見て、カッコイイとか思ってたしな」
みるみるチサの表情が和らいでいく。
チサは本当に判りやすい。自分で気付いているのかどうか、口に出す前に考えていることが分かってしまう。
「本当に?お父さん、きっと喜ぶ」
チサのその大げさな喜びに対し、柚木は、そのむず痒さに悪態をつく。
「鼻水出てんぞ、お前」
「え? うそ?」
「うそ」
ドス! チサの両腕からスイングされた鞄は柚木の腹に今日、二度目の衝撃を与えたのだった。





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