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 ←俺に「彼女」が出来るまで……16、副担任に言いがかりをつけられました② 
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俺に彼女が出来るまで

俺に彼女が出来るまで……17、副担任にお呼び出しを受けました①

 ←俺に「彼女」が出来るまで……16、副担任に言いがかりをつけられました② 


 大輔は家庭教師を無事に家に帰す。
 そのあと、大きく深呼吸しつつ振り向いた。誰かに見られているような気配は、ずっと消えていない。
 電信柱の陰に目星をつける。痩せた黒い人影がそれに気づき、大仰に肩を震わせた。
「逃げるなよ!」
 素早く駈けた。シルエットは背中を見せるが、男の速度には追いつかない。大輔は力任せに、そいつの腕を掴み上げた。
「痛い!」
 そいつは思いっきり、こっちを睨んでくる。
「大河原先生?」
 どうみても副担任の大河原だ。意外な人物に尾行されていたものだ。
 愕然として、つかんでいた腕を離す。
 相手は黒いパンツスーツに同じ色のコート羽織り、肩から大きなカバンを下げていた。彼女は鼻息荒く、額を全開にしたひっつめの髪のゴムを解く。
 さっとばらけた黒髪が、すっきりした輪郭の顔を際立たせる。副担任は、まばたきもせずに大輔を見据えた。
 彼女は興奮した面持ちで、生徒を睨みつける。
「夜道で教師に会ったっていうのに、随分と御大層な挨拶をしてくれるわね」
「それは俺の台詞ですよ。なにしてるんですか、先生」
 大河原の街路灯に照らされた頬が引きつった。
「あなたに答える義務なんかないわよ。そっちこそ、こんな夜遅くまでなにしていたの? 女の子とチャラチャラしている暇なんか、なかったんじゃないの?」
「別に悪いことなんかしてませんよ」
 憮然として答えた。
 副担任は勝ち誇ったように、肩にかけたカバンの紐を直す。
「家庭教師と毎日、勉強してるって生徒指導室で言ってたのに。さすがカンニングするだけあって、要領だけはいいのねえ」
「カンニングなんかしてないって言ったでしょ? 何回言ったら信じてもらえるんだ」
 半ば呆れて、嫌味たっぷりの口調に言い返す。
「だって私は副担任だもの。入学当初から生徒のことは見てるのよ? 遊び歩いて、カンニングして、今度は女? いい加減にしなさいよ? 学生のくせに」
 女教師が鬱憤を晴らすように、刺々しい言葉をぶつけてくる。いい加減、構うのが面倒臭い。
 露骨に顔をしかめた。大河原は、かすかに眉を上げる。
「なにか言いたいことないわけ?」
「別に。つうか俺、家に帰りたいんですけど。そこに立っていられたら道を歩けないから、どいてくださいよ」
「あら、そう」
 女教師は白々しく言い、道を空けた。かすかにため息が聞こえてきたのは、気のせいか。

 翌日。
 副担任は大輔を見ては、何度か目をそらした。不気味だと思ったけれど、こちらから話しかける用事があるわけでもないし、なにか用事があれば教師の方から言ってくるだろう。
 平穏無事に一日が終わったら、それに越したことはない。ところが、昼休みに大河原に呼び止められた。
「長野くん?」
「はあ」
 大河原は生徒の生返事に、ぱっちりした目を細めた。
「聞きたいことがあるんだけど」
「忙しいんですけど」
 誰があんたなんか相手にするんだと言いかける。副担任は大袈裟に肩をすくめた。
「昨日のこと、怒ってるの?」
「別に」
 視線を振り切って歩きだそうとすると、大河原が更に言った。
「近藤さんが退学になるかもしれないんだけどね」
「は?」
 女教師の「聞きたいこと」と「近藤さんが退学処分になること」が頭の中でつながらない。大河原は、意味ありげに口角を上げる。
「どうして単なるクラスメートに過ぎない女子に、そんなに反応するのよ?」
「先生には関係ないでしょ」
「まあ、いいわ。彼女の交友関係を知りたかったんだけどね」
「知らないよ? 大河原先生が言う通り『単なるクラスメート』だし」
「それにしては、最近仲いいよね。カンニングのテクニックでも教えてもらっているのかしら? あの子、ちょっと可愛いからって、調子に乗ってるところあるしね」
「カンニングなんてしてないって言ってるだろう!」
 我慢しきれなくて出た大声に、廊下を歩いている生徒たちが反応する。大河原は周りの生徒を一瞥し、大輔に向けて固い表情を向けた。
「まあ、いいわ。放課後、近藤さんと二人で生徒指導室に来なさい」
 なにが「いいわ」なのか、さっぱりわからない。大輔は教室に急ぎ、近藤をつかまえた。
「なあ、大河原に呼ばれなかった?」
「呼ばれた」
 同級生は、なにかを言いたそうに手招く。腰をかがめ、彼女の口元に耳を近づけた。近藤は声をひそめる。
「オーディションに合格したのが、大河原に知られたのよ」
「マジで?」
 彼女は口を結び、こくんと頷く。
「今朝ね。学校にメディアの取材申し込みが来たんだって。その電話を受けたのが」
「大河原か」
「うん」
「それで? 脅迫でもされたのか」
「素行不良に当たるとか言われた」
 近藤は面白くなさそうに口を尖らせた。
「ひどいと思わない? たかがモデルオーディションに受かっただけで、退学をちらつかせるとか。職員会議にかけて、追い込むって言うんだよ? 信じられない」
「不祥事を起こした訳でもないのにな」
 生徒一人を退学処分にするには、それ相当の理由が必要だろう。校内で喫煙していたとかね。けれども近藤は、少なくとも真面目な生徒の部類だと思う。まあ、性格はエッチなところはあるけどさ。
「女の教師って女生徒に厳しいって聞いたことはあるけど、やりすぎだよね。長野くんは、大河原先生になにか言われたの?」
「近藤さんの交友関係を知りたいから、放課後来いってさ」
 同級生が泣き出しそうな顔になった。
「なんで長野くんなんだろう」
「わかんない」
 本当に理解できない。昨夜の件といい、さっきの物言いといい、難癖をつけられる側はたまったものじゃない。
「まあ……あいつを切り抜けたら、近藤さんも高校生モデルになれそうじゃん?」
「だと思う」
 近藤が、ほんの少しだけ安心したような顔になった。



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