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俺に彼女が出来るまで

俺に「彼女」が出来るまで……16、副担任に言いがかりをつけられました②

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 副担任の大河原玲子が、生徒指導室の扉を閉める。
「そっちに座って」
 彼女は細い顎で、対面に並べてある奥の机を指した。
「職員室じゃなかったんですか」
 女教師は大輔の問いに、顔をしかめる。
「これでも一応、長野くんのプライドを守ったつもりなんだけど」
「なんのことですか」
 さっぱり訳がわからない。少しずつ腹が立ってきた。
 職員室に呼ばれたクラスメートたちは、彼女に散々な嫌味を浴びせられていた。それを延々と見せられ、尚且つ連れ込まれたのは生徒指導室だ。
「一体、俺がなにをしたって言うんですか」
 嫌味な口調で言ってやる。
 大河原はいかにも不愉快そうに、整った柳眉をひそめた。
「あなた、実力テストでカンニングしたでしょ」
「は? なにを根拠に?」
 彼女は怯まず、ふん、と鼻を軽く鳴らした。
「だって成績ブービーだった長野くんが、いきなりあんなに成績が上がるわけがないもの」
 大輔は内心、大河原に大きく舌を出す。
「父が家庭教師を付けてくれたんです、それで勉強しただけの話です」
「長野くんの隣の席は、学年トップの子よ? それに入学してから自堕落し放題だった生徒が、たかが二、三週間で一生懸命に勉強して、あれだけ成績が上がる訳がないでしょ。私は信じないよ」
 大輔の怒りは頂点に達した。
 自分だけがバカにされるのはいい。けれど、麻美子のことまで侮辱されるのは許せない。
 彼は下腹に力をこめた。
「信じなくても結構です。この前の実力テストは、本当に、がんばった成果だから。第一、カンニングなんかできる訳ない。時間中、机の周りを先生方が歩き回ってたんだし」
 大河原は目を細めた。
「それにしては全科目での上がり幅が大きいのよね」
「知りませんよ、そんなの」
 彼女は軽く鼻を鳴らす。
「じゃあ、本当にカンニングはしてないのね? そういうことしたら、退学ってわかってるってことよね?」
「しつこいな」
 顎を上げて相手の鼻の辺りを睨みつけた。ここが学校じゃなくて、おまけにコイツが男なら拳が出ているところだ。
 副担任は臆せずに腕時計を見遣り、顔を上げた。
「わかったわ、教室に戻って」
 大輔は肩をいからせて扉に向かった。背中から大河原の声がする。
「次回の試験で、カンニングなんかしてないってこと証明してくれたらいいわよ」
 忌々しい気分で引き戸を閉める。
 廊下の端に近藤がいた。
「少しだけ聴こえてたよ。大河原先生、ひどいね」
「まあね」
 同級生は肩をすくめた大輔に、気の毒そうな眼差しを向ける。
「ああいう風に言われると、やる気がなくなっちゃうよねえ。元気出してね」
 彼女は心底、心配そうな顔をしていた。
「ありがと、って言うか近藤さん、気にしてくれてたんだ?」
 大輔は申し訳なく思う気持ちを、わざとからかうような言い方に変えた。近藤は「ばか」と言い、頬を緩めて笑った。

 大輔は今、美人家庭教師とお茶を飲んでいる。
 狭いアパートには、麻美子の笑い声の余韻が残っていた。
 差し向かいになった二人の間には卓袱台があり、実力テストの答案が並べてある。
 ひとしきり鈴を転がしたように笑った彼女は、改めて答案用紙と大輔とを見比べた。
「災難でしたね。カンニングを疑われるくらい成績が上がっちゃうって、誰も予想していなかったんでしょうか」
 彼は、さっきまで身振り手振りを交え、副担任の言葉を再現していたのだ。久しぶりに会った麻美子の頬は、痩せたように見えた。それで、少しでも笑わせてやりたいなと思ったのだ。
 けれども大輔は一段落ついた後で、わざとしょんぼりした顔を作る。
「そこまで学校の先生に信用されてなかったと思うと、がっくりです」
 麻美子は目を丸くして、必死で訴えかけた。
「それだけ『見返した』ってことで、いいじゃないですか」
 彼は家庭教師が一生懸命に励ましてくれようとする様子に、思わず口元が緩みそうになる。
「学校の先生方が疑っても、私はちゃんと知ってますから……!」
 麻美子は真剣な眼差しで、大輔を見つめている。彼は家庭教師を見つめ返す。
「あ、あのう俺。す、少しでも麻美子さんのよろこぶ顔が見たかったから」
 麻美子の頬に朱が射した。
「うれしいです、とっても」
「……本当に?」
 麻美子が肩の力を抜いたのが伝わる。
「私も大輔さんが……お父様のいる関西に行ってしまうのは、いやですから」
「い、いやですよ俺だって。せっかく麻美子さんに教わって、勉強が楽しくなったのに」
 彼女は、ほっとしたように肉厚の唇を丸めた。ふう、とため息をつく仕草は癖のようだ。
「じゃあ、私も安心してがんばれます。大輔さんの家庭教師も、趣味も」
「趣味?」
 麻美子は、深くうなずく。
「近々、大学で発表会があるんです。大輔さん、見に来てくれます?」
「なんの発表会ですか?」
 大輔が考える美人家庭教師の雰囲気からは、物静かな茶道とか、華道の発表のイメージなのだが。
 彼女は考え込んだ大輔を見て、にこにこ微笑んだ。
「内緒にしていたんですけれども。ダンスなんですよ」
「ダンス? えっ、麻美子さんのイメージってアクティブな趣味とは無縁なんですけれども」
 人は見かけによらないものだ。
「も、もしかして合宿って……発表会に関係あるんですか?」
 家庭教師は頬を両手で押さえながら、こくこくと頷いた。
「はい、修行を兼ねてアメリカに行ってました」
 大輔は絶句した。おそらく、かなり本格的なのだろう。でも、どんなダンスなんだろう?
「へ、へえ……。本場なんですか、そのダンスの」
「本場というか、ショウが沢山あって。そこに出演もできたんです」
 彼は思わず、ごくりと唾を飲み込む。
「な、なんのダンスですか。出演って……」
 麻美子は頬をほころばせた。
「ポールダンスです」
「えっ!」
 スタイル抜群の美人が、スポットライトを浴びて観客の前で肢体をくねらせ、金属ポールに絡みつくのだ。想像しただけで、大輔は鼻血が出そうになった。
 彼はもう、麻美子を直視できなくなった。その代わり、わけのわからない嫉妬が胸の中を渦巻く。
 家庭教師は不意に表情を変えた高校生に、おどおどした口調になった。
「み、見に来て、くれますよね?」
「い、行きます! 行きますとも! 他の人が観て、俺が観ていないなんてイヤすぎる!」
 大輔の声は泣きそうに、うわずっていく。
 彼女は安心したように口元を緩めた。
「ちゃんと自分の演技に自信が持てるようになったら、大輔さんを誘うって決めていたんです」
 彼は無条件に感激して、涙ぐみそうになった。麻美子は立ち上がり、鼻が熱くなった大輔の隣にやってくる。
「実力テストの成績が上がった、ご褒美です」
 ちゅっ、と頬に唇を当ててくれる音がする。その瞬間、彼は野獣になり、家庭教師を無我夢中で押し倒していた。

 麻美子を家の近くまで送っていく途中――。
 彼女が躊躇しながら、大輔に片手を差し出す。彼は迷わず、その手を握りしめた。手袋をしていない小さな掌は、ひんやりと冷たい。
 麻美子はうれしそうに頬を染め、大輔を見上げる。心底、可愛いなと思った時だ。
 大輔は背後から、射るような視線に気がついた。振り向くと、カサッ……と落ち葉を踏む音がする。
「気のせいかな」
 眉をひそめて言った。手をつないでいる女子大生が反応する。
「どうしたんですか?」
「あ、いえ……。あのう、今日は麻美子さんの家の前まで送って行きたいんですけれども」
 もしかしたら。
 こんなに綺麗な人だから、ストーカーがいてもおかしくない。送って行くのはいいけれど、逆に、自宅の前まで行って大丈夫だろうか。彼女の家を突き止めたら最後、嫌がらせを受け続けないだろうか。
 嫌な胸騒ぎがする。
 とにかく、今は家庭教師を無事に家に戻すことだ。
 それから麻美子をつけ狙う輩を捕まえてやる。絶対だ。




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