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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……44

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44、奔流へと


 軍人の詰所が放火された知らせは、すぐに宮殿にも届いた。宮中にいた臣下の幾人かは、即刻エレーナ女王を探した。
「エレーナさまが、お部屋にいらっしゃいません!」
「医務室にもか?」
「先ほど見ましたが、そちらにもいらっしゃいませんでした」
 あわてふためく彼らを見て、軍閥出身の臣下たちは鼻で笑った。口には出さなくても、彼らはエレーナを嫌っていたのだ。それどころか軍閥の臣下は、宮廷をくまなく探している彼らに向かって言った。
「そんなに急いで女王を探さなくても、よろしいではありませんか」
 生真面目な老臣の一人が、血相を変えて言葉を返す。
「なんということを申されるのか」
「では伺いましょう。あの若い女王に一体、なにができるのですか」
 絶句した老臣に、レフティの息のかかった臣下は笑い顔を作る。
「海軍、陸軍を統括しているレフティさまは現地にいらっしゃる。彼の部下たちが、既にそちらに集結していることは聞いています」
 軍閥臣下は更に薄笑いを浮かべた。
「最高指揮官が陣頭指揮を取っていると思えば宜しいのでは」
「ま、まあ……」
 故・デメテールの若い頃から宮中にいる臣下は、おしなべて軍閥の臣下が苦手だ。強く言い切られると、彼らはなにも言えなくなる。
 この遣り取りを、物陰で逐一聞いていた人間がいた。エレーナ女王の侍女だ。彼女は臣下たちが固まっているところを避けながら、書庫へと向かった。
「エレーナさまは、多分、そこにいらっしゃるはず……」
 彼女は息を整えながら、書庫の分厚い扉を叩き続けていた。しかし、いくら扉を叩いても中からはなんの反応もない。
 侍女があきらめて背中を向けた時だった。見慣れた顔が視界に入る。彼女は思わず吐息を漏らした。
「レフティさま! ご無事で……!」
 レフティは侍女に向かい、右手を上げて近寄ってくる。彼の表情は決して、にこやかなものではない。しかし侍女は構わずに、レフティに走り寄った。
「俺は大丈夫だ。エレーナさまは、もしかしてこちらにいるのか?」
「はい。レフティさまがお帰りになるまでは、書庫にいると仰って」
「そうか」
 彼は唇の端だけを上げ、侍女を払いながら扉を叩いた。
「エレーナさま! レフティでございます。どうか扉をお開けください」
 ほどなくして、書庫の扉が中から開く。侍女は驚嘆しつつ、中を見据えようとした。頬が痩せこけてはいるが自分の主人には違いない、エレーナ女王がそこにいた。
 エレーナは侍女を見るなり、眉をしかめた。
「あなたはカインが来たら教えてくれたら、それでいいわ」
「御意に」
 頭を下げた侍女の心に、ほんのわずか「敗北」という言葉が浮かぶ。女王から「あなたを信用していません」と、告げられたような気がする。「レフティにしか、心を許しません」とも、言われているような気もする。
 顔を上げた彼女を、エレーナが厳しい目線で見ていた。
「なにか意見でもあるの?」
 侍女は耳を疑った。が、彼女をすぐさま、レフティの声が現実に引き戻す。
「落ち着いてください」
「ええ」
 侍女の視界に、レフティがエレーナ女王をエスコートしながら、書庫の奥へと入って行く光景が映る。彼は静かに扉を閉め、女王に向き直った。
「なぜ書庫に入ろうと思ったのですか? ここはカインのもう一つの部屋のようなものなのに」
 答えようとしたエレーナは、レフティの顔中についた細かい傷に目を見張った。
「レフティ……?! そ、その顔は……!」
 レフティは苦笑いをしながら頬をさする。
「そんなにひどいですか。まいったな、途中で顔を洗ってきたのですが」
「揉め事があるとは聞いていましたが、どうして……」
 エレーナの目に、みるみるうちに涙がたまっていく。彼の着ている衣服も、ところどころ破れていた。
「大したことではないと思うんですけれど」
 レフティは困った顔をして、改めて自身の首から下を見た。出かける前は真っ白かったシャツは、半日あまりで灰や赤黒い血のシミで汚れている。
「もう危ない目には、あなたに遭ってほしくないと言ったではありませんか……!」
 彼はエレーナの声に、思わず両手を広げて笑みを浮かべた。
「安心してください、俺……あ、いえ。わたしは、ちゃんと生きていますから」
 女王は無理に微笑もうとまばたきをしつつ、レフティの胸に飛び込んでいく。彼もまた、彼女の体をきつく抱き返した。
「心細かったのに……」
 エレーナは涙まじりに繰り返しながら、相手の背中に腕を回す。レフティは長い間、待ちわびていた「権力」が、手の中に堕ちてくる寸前であることを感じた。
 彼は大きく息を吸い、改めてエレーナを抱きしめつつ彼女の髪を撫でる。
「エレーナさまに御心配をかけてはいけないと思い、戻ってきました」
女王は目に涙をためて、レフティを見上げた。彼は暗い歓びに満たされつつ、エレーナの額にかかった前髪を退ける。
 女王が静かに瞼を閉じる。彼はより一層強くエレーナを抱きしめ、唇を重ね合わせた。他にはなにも要らない、この女を今すぐ征服したいと思いつつ。

 侍女は複雑な気持ちを抱きながら書庫の扉から離れ、階段を上がって行った。宮殿入口のホール近くに差し掛かると、どことなく懐かしさを感じさせる温かい声がする。
 声のする方向に目を凝らすと、痩躯の二人の男が並んでいた。
「カインさま!」
 彼女の、今しがたまで感じていた疲れが飛んで行く。カインとエーベルが使用人たちと会話を交わしながら、宮殿の中へと入ってきたのだ。
 彼らは侍女に向かい、少し疲れた笑顔で片手を上げる。エーベルが侍女を見ながら、朗らかに話しかけた。
「ただいま戻りました。エレーナさまは?」
「それが。その……」
 エーベルは口ごもった彼女を怪訝そうに見た。侍女は二人に近寄り、声をひそめて彼らの顔を交互に眺める。
 二人とも長旅で頬が削げたような気がする。それとは別に、侍女は彼らをまっすぐに見れなかった。
 カインもエーベルも大きな仕事を終えた満足感からか、堂々とした雰囲気が漂っていた。まるで別人にも見える。彼女は俯きながら言葉を出した。
「今、レフティさま以外には、どなたにもお会いしようとなさらないのです」
 カインの顔が曇る。彼女はそれに気がつき、手を振った。
「カインさまたちが西からお帰りになられたら、すぐに通すようにと仰せつかってはおりますけれども」
 エーベルの眉が、かすかに上がる。逆にカインは顔を曇らせたまま、侍女に答えた。
「わかった、とにかく帰還の報告はせねばならぬ。エレーナさまは、今どちらに?」
「書庫でございます」
 二人は頷き、荷解きもしないうちに書庫へと向かって歩き出した。彼らは一刻も早く、エレーナの無事を確かめたかったのだ。
 カインはエディットの呪術師が、エレーナを竜巻と共に巻き上げた情景を思い出していた。宙から降りながら、彼女を上着で覆い隠した時の感触が生々しくよみがえる。
 彼は思う。エレーナは純粋だ。純粋であるゆえの、潔癖さも持ち合わせている。それに、自分とエーベルの「真実の姿」が一体何であるか、はっきりと知られる時も近いのだろう。いや、もう既に勘づいているのかもしれない。
 女王のことを守りたい。しかし、側にいることが叶わなくなるかもしれない。本当の危険は、西の呪術師が起こした竜巻のようなものではない。おそらく、抗えない強い力のものだ。
 一端でも知っているからこそ、なんとしても力になりたい。書庫へと降りて行く階段の途中、彼の頭の奥が痛みはじめた。体の奥が「その先は行くな」と命じている。だが、臣下として、命令に逆らってはならない。
 エーベルがカインの心を察したように振り向く。彼もまた、本能で「なにか」を直観しているらしい。宮殿に入った時とは表情が微妙に違い、厳しく見える。
 カインは書庫の扉を叩いた。
「エレーナさま、カインでございます。ただいまエーベルと共に、宮廷に戻ってまいりました。エレーナさま?」
 彼は扉越しに聞こえるように話し、ノックし続けた。しかし、なんの反応もない。カインは何の気なしに、ドアノブへ手をかける。
 扉の鍵は、かかっていなかった。
「エレーナさま……?」
 カインは呼びかけ、奥へと目を凝らしたまま立ちすくんだ。書庫の奥、カインの机の上。エレーナが腰かけ、吐息を荒げている。向かい側にはレフティがいた。
 彼はエレーナの唇を貪り、片方の手で彼女の仰け反りそうな背中を支えている。彼のもう片方の手は、彼女のブラウスの上から乳房をまさぐっていた。
 レフティは扉の前で絶句したカインに気づく。
 彼はカインを見据えながら、エレーナの唇に自らの舌をさし入れる。そして彼女のブラウスをたくしあげ、乳房を激しく揉みしだく。

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