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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……28

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28、襲撃・1


 カインが遅い朝食を取った後。エーベルが声をかけた。
「おはようございます。今後のことで改めて、打ち合わせなど」
「わかった」
 彼は片手に丸めた大きな紙を持っている。カインが、ちら、と見るとエディットの地図のようだ。エレーナ女王と共に過ごした航海の片道が、もうすぐ終わろうとしている。
「一度、時間を見て停泊させようか」
「それがいいですね」
 彼らは二人で相談していた。
 もうすぐ陸に上がるという時、日程の確認をしたかったのだ。
 乗組員の中で集まったのは、エレーナ女王たち三人と、男性の宮廷料理人・ロニー、そして武術学校からカインが引き抜いてきた操縦士・ヴァリオの五人だ。他にも乗組員は機関士や清掃係ほか、十五人程いる。
 だが、軍部から一人も出さないとレフティなどから言われていたため、かろうじて兵士として言えるのはエーベルだけだった。彼ら五人はカインに呼ばれ、エレーナ女王を囲んでホールにいた。
 彼女はカインに促されるよりも先に、立ち上がって皆に礼を述べる。
「天候が良ければ明日には、エディットの一番大きな港に着くと聞いています。皆さん、本当にありがとうございます」
 エーベルはうれしそうに目を細め、深々と礼をした女王を眺めている。
 宮廷から乗ってくれた壮健なロニーが、皆に茶を振舞う途中でカインに耳打ちをした。
「エレーナさまは、顔つきが変わられましたね」
 彼の言葉にカインは笑顔を見せた。日数にすれば十四日ほどだが、以前の幼さが薄れるには充分な時間なのかもしれない。
 ロニーは他の乗組員からも頼りにされ、なにかと折衝役になることも多かった。カインは彼を重宝していた。
 エーベルの隣には、操縦士のヴァリオが座っている。華奢な彼は栗色の髪を短く刈り上げ、黒い目をくりくりと動かしながら女王を見つめていた。
 彼女は恥ずかしそうに頭を下げた。ヴァリオは一日ほとんど操縦席にいるため、今までエレーナと顔を合わせた時間があまりなかった。彼女は丁寧な言葉を彼にかける。
「また帰り道も、よろしくお願いします」
 一同が顔を合わせたところで、カインが話を切り出した。
「もうすぐエディットに到着しますが。港に着き次第、きみたち二人と他の乗組員たちには、休暇を取って欲しいと思っています。ゆっくり休んで欲しいしね」
 彼は料理人と操縦士に目を向ける。二人の乗組員は、それぞれに上官に向かって頬を緩めた。ヴァリオがカインに尋ねる。
「カインさまとエーベルさまは、女王さまと一緒に宮殿に向かわれるのですか?」
「そうしたいと考えているよ」
 エレーナ女王は、不安げに顔を曇らせた。エーベルが彼女に向かって「ご心配はいりませんよ」と声をかける。
 女王はカインを見つめる。
「ルーンケルンには伝書鳩で、わたしたちの到着を伝えるのでしたよね?」
「ええ」
 着港する予定の港の近くには、旅人たちの宿泊所も兼ねている大きな聖堂がある。その前には郷里の宮殿まで飛んでくれる伝書鳩を飼っている商人が多くいた。
「鳩がルーンケルンの宮殿まで、飛んでくれるの? 本当に?」
 女王は秘書官に素朴な疑問を口にする。今までに習ったような気もするが、いざ直面すると実感できない。
「飛びますよ」
 カインは頬を緩めて頷く。
「レフティが我々の知らせを待っています」
 エレーナは彼の口から、レフティの名前が出た途端に眉をひそめた。カインは女王の心の中で、いまだに会議のことが、わだかまっているのかもしれないと考える。
「レフティには、大事な伝言も頼むつもりです」
「大事な伝言?」
 彼はエレーナには答えず、操縦士のヴァリオを見た。
「きみにも頼むことがある。もしも、わたしたち三人が一週間経っても港に戻って来なかったら、他の皆も連れて、先にロニーとルーンケルンに帰港して欲しい。岸を離れる時には、またルーンケルンへと伝書鳩を飛ばしてもらいたい。そうすれば即座に、レフティは迎えに来るだろう」
 女王付警護以外、全員がカインの顔を凝視した。彼は口元だけを緩め、片手を振る。
「もしも、の場合だ。心配しなくていい。わたしたち三人は、必ず生きて帰る」
 エディット王室の婚礼の儀に招待された時、王室からの使者の手紙では港に着き次第、宮殿まで送ってくれると聞いていた。
 しかし道の途中で、呪術師たちの自治区の近くを通らねばならないらしい。そこは、エディット王室の政治力が及ばない地域でもあった。
 カインとエーベルの二人は、王室からの馬車とエレーナ女王を守りながら、宮殿にたどり着かなければならないのだ。自分たちの行く道すべてに、警護が付いているとは限らない。彼ら二人は、船に乗り込んでくれた人すべての安全を考え、指示を出すことになる。
 しかも夜間の自治区周辺は、屈強な男であっても通ることを嫌がるところだった。カインたちの力を使えば、万が一の事態に遭っても突破できるだろう。彼自身はエレーナ女王の目の前で「魔力」を使いたくなかったけれども。
 料理人のロニーが「生きて帰る」と言ったカインの口元を、じっと見ている。
「カインさま。承知いたしました」
 ロニーが彼を真剣な眼差しで見つめた。
「必ずエレーナさまと共にお帰りくださいますね?」
「約束します」
 エーベルは眉間に皺を寄せ、不服そうに口を尖らせる。
「ロニーは、わたしのことは嫌いか?」
「い、いえ! そういうわけでは!」
 その場に居合わせた全員が吹き出した。
 張りつめて深刻になっていた空気がエーベルの一言で、少しだけ柔らかくなる。つい今しがたまで沈みがちだったエレーナ女王の笑顔を見て、誰しもが安心した気持ちになった。





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