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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……25

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25、憂い・1


 レフティはエディット王室の婚礼に、女王が招聘されたことを訝しく思っていた。それに、臣下のほとんどが、招待を前向きに考えているのが気にくわない。
 会議は軍部と政治部の面々、それにエレーナ女王で成り立っていた。政務担当たちは先代の国王が即位した頃から仕えている老臣だ。
 西国からの招待の議題は以前に一度、俎上に上がっていた。しかし、その時は「レフティが不在だから」という理由で保留となっている。いざ再開してみると、レフティとエレーナ女王以外は口々に言った。
「あちらの呪術師連中から招待されるならともかく、エレーナ女王は出席するべきではないか」
 レフティは唖然とした。ひとりの老臣が、彼をなだめるように話しかけてくる。
「デメテールさまも慶事を大事にしておられましたよ? それに、このように丁寧な招待状を頂いたのは初めてです」
「で、でも」
 いわゆる成り上がりで臣下になった彼には、返す言葉がない。女王がエディットからの招待を受けなければ、沽券にかかわるとでも言うのだろうか。
 政務担当の、おとなしそうな老臣が何人か、レフティとエレーナ女王の顔を固唾を飲むように見比べている。彼は「なにかが変だ」と感じた。が、それを言葉にすることができない。
 レフティは、ふと、上座からの女王の視線に気がついた。
 固い面持ちで整った唇をきゅっと結び、こちらをじっと見ている。その眼差しは会議に参加している、他の誰よりも真摯だとレフティは思う。
 彼は同時に耳が熱くなる。年端も行かない頃から見つめ続けてきたエレーナは、フランと関係を持つようになってからも「抱きたい女」であることには変わりがなかった。
 会議は女王がエディットを公式訪問することが、既に決まったものであるかのように進んでいた。レフティは腹を括る。
 エレーナさまが西へ行かれるのであれば、海軍のトップとして自分が付き添って警護に当たり、共にエディットへ行こう。
 彼は唇を固く結んでから後、思い切って挙手をした。
「なんでしょう?」
 レフティはエレーナ女王に一瞬だけ視線を走らせ、立ち上がる。一気に気持ちを言い表した。
「エレーナさまをお守りして、わたしがエディットにまいります」
 しかし、レフティが気持ちを込めて発した言葉の直後、エレーナ女王が立ち上がった。
「待ってください。レフティ、あなたは行ってはなりません」
 女王は愕然とした彼に、まっすぐ視線を向ける。
「わたしが不在でも、外敵が攻めてこられないようにしていただきたいのです。国民の安全の全権を、あなたにお任せしたいと考えています」
 エレーナの澄んだ力強い声が、さざめいた議場の隅々まで届く。
 レフティは反論した。
「危険すぎます。わたしでなければ、あなたをお守りできません」
 彼女の表情が泣きそうに歪む。
「先日、ようやく蘇生したばかりなのですよ? 危険だからこそ、ルーンケルンの外に出て欲しくありません。わたしをこれ以上、悲しませないでください」
 彼の隣に座っていた老臣が、つぶやく声が聞こえてきた。
「国の指導者が一人の臣下を特別扱いするのは、いかがなものか」
 レフティは顔を動かさず、ちらりと目だけを動かす。すると、老人は鼻息を荒く吐き出して、いかにも取って付けたように言い訳をした。
「カインさまが甘やかしすぎたのでしょう、多分ね」
 レフティは聞こえよがしに大きく舌打ちをしてから、正面に向き直る。
「では誰がエレーナさまと同行するのですか」
 彼の問いかけに、会議に参加している臣下たちは急に下を向いた。軍部に属する一人の臣下が、顎を撫でながらレフティを諌める。
「レフティさま、カインがいるではないですか。彼ならば適任でしょう」
 彼は「カイン」の名前が出たことで、発言した臣下の方を凝視してしまう。
「あの線の細い秘書官が、どこまでやれるか。我々は見ていたらいいのです」
 レフティの心に、かすかな揺らぎが生まれた。その臣下は鷹揚に頷きながら、彼に同意を求め続ける。
「エレーナさまが無事にご帰還されることは、ここにいる全員が願っていることです。海軍から一番、頑丈な船を出せば良い。それに、あちらの国も女王さまの警護には、責任を持つと言っているんですよ? わたしもレフティさまも、自分の部下は誰ひとり危険に晒したくはない。カインさまで、問題ないでしょう」
 レフティは思い直す。これはチャンスかもしれない。自分が待ち続けてきたこと、あらゆることが叶う日が近づいてきたのかもしれない、と。
 考えてみれば、カインは俺たち「生身の人間」とは違うのだ。彼はエレーナ女王の血の気が失せた顔を見て内心、ほくそ笑んだ。
「エレーナさま。仰せの通りにいたします」
 頭を下げたレフティの心に、少し前に執務室に入れたエディットの呪術師・ヴィクティムの言葉が蘇ってくる。
 ――「わたしは知っておりました。あなただけが、エレーナさまの愛情を受けていらっしゃる方だと。いつかあなたは、エレーナさまと愛し合うようになる」
 ――「あなたこそがルーンケルンの国王になる器がある方なのです」
 ヴィクティムの言っていたことが実現に近づくのなら、こんなに嬉しいことはない。レフティには妙な確信があった。あの男は自らが朽ちても、エレーナ女王は全力を持って護るだろう。
 彼は戴冠式の前夜、書庫で盗み見たカインの姿を思い浮かべた。宮中の人間が知っている「カイン」とは、真逆の存在だった、あの男。
 別人かと思う程の威圧感を全身にたたえていた痩躯の男の正体は、幾たびも戦ってきた「魔王」に違いない。彼はエレーナを愛している。おそらく、命に替えても彼女を生還させるだろう。
 レフティは心の中で考えていたことが、少しずつ実現していくことになんの畏れも感じていなかった。それどころか、なぜか会議の最初に覚えた「違和感」が、綺麗さっぱり消えていた。
 今の憂いはエレーナ女王とカインを載せた船が、無事に西に着いたかどうか。その知らせだけを待っている。




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