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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……24

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24、儀式の裏側で



「杯の儀式」が、廷内の大広間で行われていた。宮中を含め国の隅々まで男女を問わず、国家に尽くしたと認められた者が呼ばれ、女王に祝福を受ける儀式だ。
 儀式に呼ばれた人間は、一家一族の誇りとされていた。広間には大勢の人で溢れ、皆は一様に誇りと自信に溢れた表情をしている。
 大広間の前方には祭壇がしつらえてあり、中央の位置、参列者を見渡せるようにエレーナ女王がいる。
 戴冠式の時の衣裳よりも、ウエスト部分が絞ってある裾の広がった純白のドレス。一連のパールネックレスと耳元のピアスが、誰の目にも清々しく映った。
 参列者は一人ひとりが女王に名を呼ばれ、礼をして彼女の足元に|額《ぬか》づいてゆく。すると、女王が代々受け継がれてきた聖剣を右肩に当てる。額づいた者は、国家と神に誓いを立てるのだった。
 今まさに、レフティがエレーナの足元に額づきつつ、誓いの言葉を述べようとしていた。
 彼の張りのある声が、静まり返った広間の中に響き渡る。
「わたしは神の御名において、他者を裏切らず貶めず、国家が永く続く礎になろうと誓います」
 その後、女王が小さなグラスにワインを注ぎ、誓いを述べた者は飲み干すのだ。
 剣を授かる者は皆が同じ言葉を述べる。だが、その誓いを、生涯持ち続ける者は少ない。
 広間の最後方に、紺色の礼服を身に着けたカインとエーベルが立っている。彼らもまた、レフティと同じ言葉を女王に誓う。式典を境に、カインはエレーナ女王の秘書官となり、エーベルは女王専属の警護官に着任する。

 彼ら二人は憂いている。軍事演習の日、レフティに突き刺さった矢のことだ。
 レフティはあの日、落馬した後に気を失い、そのまま鼓動が止まった。失血も多かった。彼が宮廷に運ばれてきた折、エレーナとカインは視察のために、二日間、廷内を不在にしていた。
 エレーナが落馬直後のレフティの姿を見なかったのは、幸いだったのかもしれない。彼の体は泥にまみれて冷え切っており、瞼を開けたままで、空をにらんでいるようにも見えた。
 レフティの力尽きた姿を見た廷内の医者はもちろんのこと、隣接している教会の魔術師たちは、彼の看護と蘇生に努めた。
 エレーナ女王と東国首脳たちが会見する直前、レフティは幸いにも蘇生した。
 カインとエーベルが杞憂しているのは、この国の魔術師たちの「蘇生の術」のレベルだった。二人の記憶によみがえるのは、デメテール国王が絶命していた日のことだ。
 カインはレフティに「人払いをしてくれ」と頼んだが拒絶をされた。デメテールの心臓停止から発見まで、魂が飛散しつくす前だったら……カインはやすやすと、デメテールを蘇生させたろう。
 この国の魔術師たちの能力でレフティが蘇生したことに、カインとエーベルは内心で驚嘆した。しかし彼ら二人は、次の疑念を持っている。
 ――魔術師たちは、おそらく。レフティの体に根付いた「呪い」まで呼び戻したのではないか。
 ふわふわと大気中に飛散しようとする、個人の魂をより合わせて体内に落とすことは難しいとされる。 意志が強く頑健なレフティでも、例外ではない。
 彼の魂が完全に飛散する前に「心」も「記憶」も、体に収めたのはいいが、呪術師に仕込まれた呪いまで、あらたにレフティの生命の中に刻まれたのではないか。
 カインとエーベルは、レフティの中に息づいているかもしれない「不吉な芽」が出ないように祈るしかなかった。エーベルは彼に近いフランに護りの術を施した。しかし彼自身は、カインと同様に自覚している。
 魔族は他者を傷つけることには長けている。反面、他者を護る術は片手で数えられるほどしか持ち合わせてはいない。

 式典は滞りなく終わり、エレーナは控え室で侍女からの知らせを聞いていた。「杯の儀式」の最中に、宮廷の正門に西国・エディットからの使者が来たと言う。
「西の方々の婚礼の日取りは、今日より一ヶ月先にございます」
「そうですか」
 エレーナは真剣な顔をして頷いた。侍女は心配そうな顔をして、女王になにか言いたそうな顔をしている。
「心配は要りませんよ、大丈夫です」
「でも……エディットですよ?」
 女王は侍女の目を、じっと見つめた。
「わたしにはカインがいますから」
 諭された侍女が、控え室の片隅で立っていたカインの方を向いた。エレーナも侍女につられ、カインに目線をやった。カインの横にはエーベルがいる。
 名前を出された当の本人は、さも意外そうに目を細めて女王と侍女を交互に見つめる。
「ようやく、エレーナさまに認めていただきましたね」
 侍女が一瞬、目を見開いてくすっと笑う。彼女にはカインが、人前で冗談めかしたことを言う人間とは思えなかったから。
「笑わないでくださいよ、わたしにだって冗談を言う時くらいあります」
 カインは侍女に笑いかけつつ、右手を振る。目尻を下げた彼の鳶色の瞳を直視した侍女は、頬を赤らめてうつむいてしまった。
 エレーナが侍女の変わり様を間近に見て、明らかに面白くなさそうに唇を小さく閉じた。カインがそんな女王を、不思議そうに眺める。
「どうなさったのですか?」
「な、なんでもないわ」
 一瞬、つい、と横を向いた女王が気を取り直したようにカインに目をやり、手招いた。
「なんでしょう?」
「この式典が終わったら、西に行くための準備をしないとならないのよね?」
「すべて整えてあります」
「わかりました」
 エレーナがほっとしたように頷き、カインを見上げる。
「その前に、地方から来た皆さま方に御挨拶を」
「承知しています」
 女王は花が咲き出す時のように笑った。二人の遣り取りを眺めていたエーベルが、扉を開ける。
「あちらに」
 彼が視線を動かした先から、はるばる足を運んだ参列者たちの小さな歓声が上がった。エレーナの後ろを、エーベルが歩き出して行く。
 広くはない控え室に、さきほどの侍女とカインが残された。
「エレーナさまは、大役を果たされましたね」
 彼女は秘書官を見上げ、ほっとしたような面持ちをした。
「早起きして、一生懸命に練習していましたからね」
 侍女が驚き、半ば感心したように声を上げた。
「そうなんですか?」
「わたしは練習台になりました」
「まあ」
 彼女はころころと笑いながら言う。
「陛下が崩御されてから、あまり日にちも経っていらっしゃらないのに、あんなにしっかりなされて……。カインさまが特別に、お教えしたことでもあったのかと」
「なにもありませんよ」
 カインも笑いつつ否定した。彼女に笑顔で応対しながら、心は早くも西行きの航海のことを考えている。



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