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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……21

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21、長い夜・1



 フランと中庭で別れたエーベルは、今、カインの執務室の前にいる。彼は片手に、赤ワインとグラスを二つ持っていた。
 リネン係の女友だちと別れた後、女王付きの侍女から「杯の儀式」の日取りが決まったと聞いた。エーベルは以前から、よろこばしいことは真っ先にカインに報告している。
 扉を軽くノックすると、中から上官の声がした。
 エーベルは礼をして中に入る。カインは彼が持っているワインの瓶を見るなり、笑い出した。
「気が早いなあ、エーベルは」
 言われた部下は上官の珍しく砕けた様子に、つられて口角を上げた。
「なんのことでしょう?」
 カインはエーベルの目尻を下げて冗談めかす様子に、思わず頬が緩む。
「儀式の日取りだろう? わたしが決めた日程だ」
「そうでしょうね」
 二人は互いに顔を見合わせて笑った。
「杯の儀式」というのは、宮廷に仕える人間だけではなく、国内全域に渡って昇進した者・国家に大きな徳をもたらした者に対して女王が剣と杯を授ける儀式のことだ。
 授けられる側は女王の足元にぬかづき、国家への忠誠や弱者に対する敬意や擁護を誓う。ルーンケルンでは、その儀式に呼ばれることは一家一族の名誉とされていた。
「あまり寛いでもいられないよ。儀式が終わったら、翌日に西へと航海することになると思う」
 カインは言いつつ、エーベルからワインを注いでもらったグラスを掲げた。エーベルもそれに応え、カインと心づくしの乾杯をする。
 ほんのひと時の休息だった。二人とも、昼間に宮廷を訪れた西からの使者の知らせは承知している。 

 ちょうどレフティが収容所で、密航者やヴィクティムと会っていた頃のことだ。
 隣接している教会の教会長を伴い、エディット王室からの使者は告げた。
 ――我が国と国交を回復してはいただけないものか。これまでの国交上での軋轢があったことは承知しているが、水に流してはもらえないものだろうか。わたくし共も、ルーンケルンとは友好関係を結びたいと考えている。
 ――このたび、我が王室の皇太子が貴族の娘と婚礼を執り行う。ついては、エレーナ女王陛下をエディットに招待したいと王室すべてが熱望している。もしも海を渡って来てくれるのなら、最大限の礼を持って我々は女王陛下を歓迎したい。
 その時に宮廷内にいたエレーナ女王はもちろんのこと、臣下たちも急遽集まり、使者を交えて話し合った。会議では使者の言い分を聞いた上、時間をかけて結論を出すべきものだ、という意見が多数になり会議は散会になった。
 しかし、カインもエーベルも予見していた。おそらく、自分たちがエレーナ女王と共にエディットに行くことになるだろうと。
 実際、使者が廷内から去った後の臣下たちは様々な意見を言い合った。
 慶事なのだから、ルーンケルンからも、なにがしかの表明も必要なのではないか。デメテール陛下の遺志を受け継ぎ、相手側からなにを言われても一切の接触を断るべきではないか。
 混乱した席上、年老いた臣下の一人が声を上げた。
「レフティの帰りを待ち、それから結論を出しても良いのでは?」
 レフティが「杯の儀式」に出席することは、周知の事実だった。彼は近々、小規模ながらも陸軍を正式に編成することになる。
 防衛は外交センスが必要とされる。いつの頃からかデメテールに仕えてきた臣下たちは、その任務を面倒だと感じ、彼に丸投げしていた。
 カインは「決断はレフティに任せて」と言い、満足そうに顎髭を撫でる臣下たちを、苦々しく思う。と同時に、エーベルが言った「今すぐ、持てる力をご開放ください」という言葉を思った。
 そうしてしまえば楽なのかもしれない。エレーナのために目障りな存在は、ことごとく消せるだろう。
 しかし今までの自分自身と、どう違う? 今までに何回、こんなことを自問自答しただろう?
 カインは臣下たちから目をそらし、上座のエレーナ女王を盗み見る。彼女は顔色を変えず、どんな意見も聞き逃すまいと努めているように見えた。
 女王は長い黒髪を後ろで一つに束ね、発言する臣下の顔をじっと見つめ、時折頷く。彼女が真剣に人の話を聞いていることが、カインに伝わってきた。カーテン越しに窓から射し込む光は、エレーナのほっそりした頬や首筋を白く輝かせていた。
 あの人を、これ以上悩ませてはいけない……。
 カインは思う。レフティの答えを聞かずとも、自分とエーベルがエレーナ女王を護りつつエディットに向かうことになるだろう。会議が散会した後、彼は真っ直ぐに執務室に入っていたのだった。

「もしかしたら、我々は生きてこの地を踏めないかもしれない」 
 問わず語りのように漏れた言葉に、エーベルの声が聞こえる。
「わかっています。お供いたします」
「杞憂に終わってくれたら一番いいと思うが」
「エレーナさまが生きておられたら、それで構いません」
「同じ気持ちだよ」
 カインは顔をほころばせ、「そういえば」と首を傾げた。
「今日はエレーナさまのお部屋の警護はしなくていいのかい?」
 上官の問いに、部下は改めて姿勢を正した。
「レフティは、今日から自分の部下を配属しています」
 彼の言葉を聞いたカインは眉をひそめる。
「きみに女王専属の警備兵の内示が出たのに? せめて交代制でないと、道理ではないような気がするが?」
 エーベルは目尻を下げて、飄々と自信を持って言い切る。
「まあ、あと二日もすればエレーナさまから御指名がありますから」
 カインは軽く目を見開いた。
「エレーナさまのお心を読み取ったのか?」
 部下はウィンクをして唇の両端を上げた。
「エレーナさまのお心を読むなど、とんでもない。カインさまでもしていらっしゃらないことを」
 カインは机から立ち上がり、エーベルの頭を小突いた。

 燭台の揺らぐともしびの下、汗ばんだ素肌の男女がいた。
 男のがっしりと整った肩に連なる背中から腰が大きく動くたび、組み敷かれた女は小刻みに声を上げて身を震わせる。
「レ、レフティさま……あ、ああっ」
「そろそろ行くぞ……」
「は、早く……き、きて下さいませ。ああ! も、もうっ……んくぅっ!」
 レフティはフランの表情を見届けた後、弛緩している彼女の体内に精を放つ。彼はフランを抱いている時だけは、誰からも赦される気がする。レフティは満足するまで精を注ぎ、彼女の気が戻るまで体をきつく抱きしめる。
 ほどなくして、フランの呼吸が整ってきた。
「レ、レフティさま……もうすぐ蝋燭が尽きてしまいます」
 レフティは声をかけられ、頬がまだ熱い彼女の髪を直してからベッドから外れた。フランの指さす壁の上方を見やる。言われた通り、燭台に差された蝋燭は今にも消えそうだ。
 じりじり……と音を立てる蝋燭が尽きる間際。彼は新しい蝋燭を継ぎ、差し替える。
「やっぱり火が消えると、暗すぎて足元も見えないね」
 レフティはフランの隣に滑りこみ、骨ばった手指で彼女の髪を撫でた。彼はフランの顔がほころぶのを見るのが好きだ。
「聞いてくれるかい? 『杯の儀式』に呼ばれているんだよ」
 彼女は上官を見上げて頷く。
「レフティさまの口から、教えていただきたかった」
「悪かった」
 フランは寝返りを打ち、レフティに身を寄せる。彼の静かになった鼓動が伝わるような気がした。
「フランは知ってたの?」
「同じ儀式に呼ばれている人から聞きました」
 彼は眉をしかめる。
「カイン?」
「違います。部下のエーベルから」
「ふーん」
 レフティはため息をつき、起き上がった。
「どうしたんですか?」
「あの銀色の髪の毛の青年か。一度も話したことはないけど、顔はわかるよ」
 フランは彼の声が、あからさまに嫌そうに変わったことに気がつく。
「どうしてレフティさまは、カインがお嫌いなのですか?」
 彼女も起き上がり、目線だけで身につけていた衣服を探す。体を離してしまえば、いつもすぐに上官と部下の関係に戻ってしまうとフランは思う。
「俺の右肩の刀傷の訳を知りたい?」
 彼女はレフティから、唐突に出てくる言葉に頷きそうになる。しかし、思いとどまってかぶりを振った。
「いえ……。無理にお話ししなくても構いません」
「いや。無理に、なんてことはない。きみは『転生』を信じる?」
「聞いた話ですけれど。魔術師の人たちは転生を繰り返しているのでしょう? この国にはいないけれど、呪術師も」
「そう。昔から人を呪い、貶める呪術師の最たるものが『魔王』だ」
「でも、今の世界にはいないと教わりました。霊性がある魔術師が作り出したおとぎ話なんですよね? 魔術師たちが、言い伝えているだけ……と、聞いたことがあります」
 レフティは唇を結び、一度だけ強く首を横に振る。
「現実にいるよ。そいつは、豊かな国を狙って根こそぎ奪っていく。その土地を手に入れるためには、どんな手段でも使う」
「なんのために?」
「快楽だろ。それだけだ。俺は……その男を倒すために、魔力はなくても執念だけで転生してきた。その前世のはじまりになったものが肩の傷だ」
 フランは言葉を失っていた。レフティが彼女を見据える。




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