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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……16

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16、癒し・2



 エレーナ女王が燭台のともしびを見つめる。橙色の灯りが警護係と女王を隔てていた。
「朝、すごくうれしかったの。あんまりうれしくて、つい気が緩んだのも悪かったと思う。でも……」
 エーベルは口ごもった彼女に微笑む。
「エレーナさまは、もう既に『普通の女の子』ではないのですよ」
「ええ」
 エレーナは素直に頷いて彼を見つめた。
「わたしはまだ、即位したことに実感が湧いていないのかもしれません」
「そうかもしれませんね」
 彼は深緑色の目を細め、可愛らしく素直な女王を見つめ返す。
「今のうちに、不安なお気持ちをカインさまに聞いていただいたらどうでしょう」
 エレーナはかぶりを振った。
「カインには心配かけたくないの」
 エーベルは彼女の意外な言葉に、くすりと笑った。
「複雑な女心ですね。失礼しました」
「そ、そんな……。ただ、わたしにはレフティもカインも、だ、大事なの。どちらの人も、わたしの」
「そうですか?」
 彼は思う。彼女はその一言を、誰かに聞いてほしかったのかもしれないと。
 無理もない。先日、この人は「女王」になったばかりなのだ。ごく一般の十七歳の女性であれば、国家がどうの、経済がどうのなどと考えなくていい。
 故・デメテールは側妃を作ることを嫌った。そして、自分の仕事をする際はエレーナを必ず同行させて「国家元首の立場」を教えていた。そんな矢先の急死だったのだ。
 まだ彼女自身も父親が亡くなったショックから、真に立ち直れてはいないのだろう。
「わたしはカインさまのお気持ちは、ほんの少しだけ、理解できますよ?」
「理解?」
 揺れるともしびの向こう側、エレーナが恥ずかしそうに微笑む。
「カインさまは」
 エーベルは余計な言葉まで言ってしまいそうになる。それに気づいて、目線を窓の外へと移した。
 高台にある宮廷の、更に上方にある女王の部屋からは多くの星がまたたいている。
 彼はおだやかに目の前のエレーナを見つめた。
「あなたに心配をかけられたいのです、たぶん」
 彼女は相手を言葉を失ったように見つめた。エレーナはただ、小さな唇がぽかんと開かせて、まばたきを繰り返す。
「そうなのかな……」
 ぽつん、とこぼれた言葉のあと、ひっそりとした男の笑い声が夜の部屋に響いた。

 フランは救護室の扉の前に立っていた。広くて長い廊下の壁には、所々に燭台が備え付けられている。揺れるともしびを見ながら彼女は途方に暮れていた。
「こんな……」
 ただ、心臓が破裂しそうだった。扉をノックするだけのことができない。命令をした上官の思惑はわからなかった。いや、わからない振りをしていた方が楽だ。たぶん、レフティは扉の向こう側で自分を待っているだろう。
「命令を忘れた振りして、やっぱり帰ろうかな」
 心を決めて振り向いた時だった。救護室の扉が音もなく開き、フランを背中から抱きすくめる存在がある。
「きゃ……っ」
 レフティはフランの体を抱きしめながら、大きな掌を彼女の唇に当てる。
 彼女の耳元に低い声が流された。
「静かに。蝋燭が一本尽きるまでは待つつもりだったが、待ちきれなくて出てみたんだ」
 フランは逆らえない。背中から抱かれた姿のまま、上官の動きに従うしかない。
 レフティが彼女の口に当てていた手を外し、扉を閉める。フランが壁の上方を見ると、真新しい蝋燭が赤々と燃えていた。
「ど、どうして?」
 彼女はなぜか、急に部屋の中が橙色に滲んできた。肩のあたりに人の呼吸音。背中から、ぴったりと離れないがっちりした腕がほどかれた。気配が目の前に来る。
「泣くことないのに」
 レフティがフランの頬を伝った涙を人差し指で拭う。
「だって」
 下を向いた彼女の手首をつかみ、ベッドへと座らせる存在がある。ぼうっと浮かび上がったその人は、フランの目を優しく覗きこんでいた。
「夜、男の部屋を訪れたのは初めてだったのか?」
 彼女はなにも答えられずに、両手で顔を覆った。考えあぐねて今夜、エプロンを取った制服姿で来たことが、せめてもの抵抗のつもりだった。
 レフティは、そんなフランのことがとても可愛らしく見える。本当になにもかもが「はじめて」らしい。
「こっちを向いてごらん」
 彼は言いながら相手の頭を優しく撫でる。するとフランは顔を覆ったままで、精一杯かすれた声を出した。
「そ、そんなこと軽くできる人なんですね」
「誰にでもするわけじゃないさ」
 そう言った彼は頭を撫でていた手を止める。フランはびくびくした眼差しで、すぐそばにいる男を見つめた。
「本当はわたしじゃなくて、エレーナさまになさりたいのでしょう?」
 レフティは胸を引いたが、彼女の肩に手をかける。
「なにが言いたい?」
「好きな人の、代わりですか?」
 フランは彼を見上げ、一気に言葉を吐き出した。問われたレフティは、静かに首を横に振る。
「違うよ」
「そうじゃないんですか……?」
 戸惑ったような彼女のつぶやきに、レフティは切なくなる。心の中と理性が上手く折り合いがつかない。今すぐ抱きしめたい気持ちがもどかしい。
「なんでなんだろう、自分でもよくわからないんだ。俺のことなのに」
 フランにはレフティの弱々しく聞こえる声が信じられない。広い部屋に灯るあかりが蝋燭だけ、というのもあるのかもしれない。彼女は自分を取り巻く状況が、現実のものとは思えなかった。
 レフティさまじゃないみたい……。思った言葉を口に出せばいいのだろうか、それさえも分別がつかない。
「ただね、フラン」
「はい?」
 彼女は斜め上からこちらを見つめる視線に気がつき、顔を上げた。
「きみは違うよ、娼館の顔のない女とも違う。もちろん、エレーナさまとも違う」
「どんな風に……? 若くないとかですよね」
「こんな時にジョークは言わないでくれ」
 レフティは体を動かし、フランの体を真正面から抱きしめる。こらえきれない気持ちを精一杯に抑えて告げる。
「これから俺がフランを抱くことを許してくれるかい?」
「こ、断ったら?」
「許してくれるまでキスするよ」
「え?」
 レフティは彼女の額にかかる前髪を直す。フランの目が怯えている。わかっていたから優しくする。
「んっ……」
 ついばむように、いたわるように。自分の心が伝わるように。何度もキスしながら思う。……彼女がエレーナさまと比べられているのかと思うのは当然かもしれない。でも違うんだ。
 レフティはフランの呼吸が軽く上がってくるのを感じる。
 彼女を柔らかく抱きしめ、ベッドの上に押し倒す。分厚い胸板の下でフランが言葉を失い、身をすくめた。
「きみといると」
 彼は口づけながら囁く。
「気持ちが安らぐんだよ」
 エレーナを救護室で咄嗟に抱きしめた時とは違う温かい感情が、ひたひたと胸に押し寄せる。レフティは夜通し彼女を、壊れ物を扱うように抱きしめた。




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