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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……14

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14、生還


 レフティの目が覚める。頭上に心配そうな教会付の魔術師と、エレーナ女王の顔があった。
 彼は視界に映る白い壁と二人の顔を見た瞬間に飛び起きた。老いた魔術師だけならまだしも、エレーナ女王の泣き出しそうな顔が見えた時に「これは夢ではない」と確信したからだ。そして、ここは宮廷内だとも。
 がばっと起きた彼に、エレーナの涙まじりの声が聞こえる。
「ああ……よかった! レフティ……!」
 心なしか彼女の唇の動きと、こちらに聴こえる声の響きが合っていないような気がする。疑問に感じた自分がなにか口に出したような気もする。
 頭の中に魔術師の声が響く。
「あなたが何度かうわ言のようにおっしゃったからですよ。わたしはレフティさまの魂が拡散してしまう前に、エレーナさまをお呼びだてしたのです」
 レフティは体と心が、ようやく一つにまとまりつつある。彼は知覚したことを確かめたいと感じ、右手を伸ばす。
 エレーナの心地よい冷たさの掌が彼の手を取った。
「無理しないでください……!」
「えっ……」
 この時にレフティ自身、己の頭と心、それと体が寸分たがわずにつながったことを感じた。思わず両腕を伸ばして身近な温もりを胸元に引き寄せる。
「エレーナさま!」
 突然すぎて、きゅぅ、と声を漏らすエレーナ女王に構わず、力を込める。魔術師が気を遣ったのだろうか、部屋を出て行く気配がする。
 彼は彼女の、細く頼りなく、細い肩から胸にかけてのあたたかみを掌や腕に残してから腕を解いた。
 あらためて女王を見ると、自分が好きな白いワンピースを着ている。マーメイドラインで膝丈のものだ。それが腰から上に、くしゃくしゃに皺が入ってしまった。
「すみませんでした、分をわきまえずに」
 思わず詫びたレフティに、エレーナ女王は涙を拭いながら笑った。ドアの向こうからノックの音と、カインのくぐもった声が聴こえる。
「エレーナさま、お時間です」
 レフティはドア越しの声が聞こえたことで眉をひそめた。それを見た女王が彼に向かって、にっこりと微笑む。
「かまいませんよ。ゆっくり寝ていてください」
 彼女はレフティに言い残し、くるりと背中を向けて出て行く。後ろでまとめた長い髪が、自分が抱きしめたことでやや乱れていた。
 レフティは気がついて、ほくそ笑む。
 エレーナは自分の髪が乱れたことを知っているのか、いないのかはわからない。が、ワンピースを皺だらけにした姿でカインの目の前に出て行くのだ。
 男にとって、これ以上の屈辱があるだろうか。レフティは暗い歓びに満たされつつ、ふたたび仰向けの姿勢でベッドに寝そべった。
 天井の白い色を見ながら思う。自分が倒れてから、何日くらい経っているのだろう……? 誰か教えてくれないだろうか……。
 ひとつのことが気になると、そればかりに神経が行ってしまう。彼は寝返りをうって、首の後ろを撫でた。視線の先には白いカーテンの揺れる窓がある。半分ほど開け放しているらしい。
「あんまり痛くないな」
 独りごちていると、大きく風が入ってきた。木綿のカーテンがふわりと浮き上がり、芝を歩いている紺のワンピースと白いエプロンの姿が二つ見えた。
「あ、あの人は」
 彼は思わず大声を上げ、同時にベッドから出ていた。やっぱり、あの横顔は。
「フ、フラン! ちょ、ちょっと!」
 耳をすますと、驚いたような女性の声が聞こえてくる。レフティは、これだけでは異常者に思われてしまうと焦った。
「だ、誰?」
「あんただよね? ……呼ばれたの?」
「気のせいよ、きっと」
 レフティは窓から顔を出した。
「おーい」
 リネンバスケットを持った女性二人が彼の顔を目を丸くして見つめ、一拍置いてから「きゃー!」と口々に叫ぶ。そのうち一人は、まさしくフランだった。レフティが、人間違いでなくて良かったと思ったのも束の間。
「ゆ、幽霊!」
「いやああああ!」
 フランともう一人の年嵩の女性はぺたんと芝に座り込み、口をぱくぱく開けている。レフティはあわてて手を振った。
「違う、幽霊じゃない! フラン、ちょ、ちょっと来て教えてくれないか!」
 彼は胸の前で両手を合わせる。バスケットを持った年嵩の女性が、今度は絶句しながら彼女とレフティを見比べた。
「なっ、なんですか先輩!」
「レ、レフティさまが……あんなことするなんて。ありえない……! やっぱり幽霊に決まってる!」
 先輩、と呼ばれた女性はフランを上官の方に押し出し、あわてふためいたように後ろの方向へ駆けだして行く。
「せっ、先輩ー」
 彼女は、おろおろした顔で先輩の後ろ姿とレフティの顔を見た。しかし、すぐに肩を落とし窓の内側の上官に告げる。
「今、そちらに伺います」
 フランは「仕方ないなあ」と、ぼそっとつぶやく。こんな時、上官の命令は絶対……と身に沁みている自分が恨めしい。
「すまない」
 レフティは彼女のため息まじりのつぶやきが聞こえ、即座に頭を下げた。顔を上げた彼の、琥珀色の髪を風が揺らす。フランは思わず頬を染めた自身に気がつき、ぶんぶんと手を振った。
「そっ、そんな情けない顔なさらないでください。ところで本当に幽霊じゃ」
「ないから!」
 フランが微笑むのを見て、レフティは心が和んだ。



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