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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……5

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5、戴冠式・3



 開けられた控え室の扉から、赤い毛氈がまっすぐに伸びていた。それを見て、足がすくんでしまう。
 たった今、レフティが扉をノックして外側から開けたとき、わたしを見て一瞬言葉を失った。彼も緊張しているのかしら。
「まいりましょうか」
 わたしが声をかけるとレフティは無言で目尻を下げ、魔術師の待つ方向を腕で指し示した。
 もう逃げられないという気持ちと、民の心に応えたい気持ちが複雑に入り混じる。その心を落ち着かせながら、あらためて毛氈の伸びた先を見た。
 そこには一人の男性が立っていた。国王を蘇生できなかったと嘆いていた魔術師だ。ハレの式典のある時に使う純白のローブを身にまとっている。
 彼はわたしの顔を見て、こわばっていた面持ちを一気に崩す。その唇が「こちらへ」と告げた。わたしは導かれるままに歩き出す。毛氈の両脇にいる人たちがわたしを見つめ、口々に祝福の言葉をかけてくれる。
「おめでとうございます!」
「エレーナ様、おめでとうございます!」
「新女王の前途に幸あらんことを」
 誰もが今日の式典を、自分のことのように晴れがましく思っているのだろう。わたしを見つめている目線には一点の曇りもなかった。本当なら彼らに感謝の言葉を述べるべきだろうが、今は緊張しすぎてそれどころではない。お父さまが存命であれば、きっと叱られているだろう。
「明日、エレーナさまが味わうであろう緊張は、これから先にルーンテルン国にのしかかってくる重圧よりも遥かに軽いのですよ」
 レフティに言われた言葉が心に染みる。
 本当にそう思う。だけど、怖いことばかりだ。頼れる父はもういないのに、わたしは彼から何一つ教わっていない。迷って泣いても、運命からは逃れられないのだ。
 あらためて顔を上げた時、真横に礼服をきちんと着こなしたレフティの姿に気がついた。思わず彼に目を向けると、紫紺色の目を細めて笑ってくれる。
 一人じゃないんだ。
 心の中に、ぽつんと陽だまりができたような気がした。レフティだけじゃない、他の臣下たちもわたしのことを見守ってくれている。
 一人じゃない、わたしは決して一人じゃない。顔を上げなければ。無理をしてでも笑わなければ。
 老いた魔術師がこちらを見つめながら笑みを浮かべ、天然石が散りばめられたティアラを両手に掲げた。わたしは歩みを進めた末、父の戴冠式も務めた魔術師の足元にひざまずく。
「天の御名に於いて、汝に冠を授ける」
 天の御名……幼い頃からカインが繰り返し教えてくれたことを思い出す。わたしや、わたしに連なる家の者は全て国民を守る義務がある。公平さ、高潔さを努力し続けて保つ者に、天は道すじと光を与えてくれるとも。
 お父さまもこんな風に、畏れを抱きながら冠を賜ったのだろうか?
 深く目を閉じた静寂なひとときの後、礼拝堂の中に割れんばかりの拍手が鳴り響いた。
 一番はじめに目の中に飛びこんできたのは、レフティが頬をわずかにゆるめて拍手をしている光景だった。彼は冠を授けてくれた魔術師の後方から、この広い礼拝堂の中の警備や設営の一切を取り仕切ってくれている。
 はじめてレフティが「踊っていただけますか」と、手を差し伸べてくれた日のことを思い出す。あの日からずっと、あなたが好きでした。ありがとう。今日も近くにいてくれるんですね。
 わたしは心の中で彼に礼を言いながら、彼だけのために顔を上げた。




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