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僕の体をレンタルします―優美香

僕の体をレンタルします……53

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第五十三話・亜衣子、ダッチレンタル了解しました



 携帯電話を即座に取ってから、まり菜に声をかけた。
「ごめん、ちょっと待ってて」
 彼女がにっこり笑って頷くのを見てから、電話の通話ボタンを押して外に出る。
「もしもし? 沢井さん?」
「ええ、お久しぶりです」
「今、少しお話ししても大丈夫かしら」
「どうぞどうぞ、僕も亜衣子さんに会いたかったところでした」
 電話の向こうで「沢井さんったら」と、無邪気に笑う声が聴こえた。
「口が上手いわねえ、相変わらず。ところで昨日、苑未と会ったの。彼女から聞いたわよ。あなた、この前、可愛い彼女と昼間から恥ずかしげもなく手をつないで電車に乗ってたって」
「参ったなあ……まあ、その通りなんですけどね」
「それで沢井さんのこと、思い出したの。お昼どきだし、彼女との時間を邪魔したくなっちゃって」
「えっ、ヤキモチ焼いてくれるんですか。亜衣子さんが?」
「まあね、久しぶりにあなたと遊んであげようかなとも思ったし」
 亜衣子さんは、かすかに声を落とした。含み笑う声が淫靡で、たまらない。
 これから午後の授業もあるのに、勃ったらまずい。生理的に直感した俺は目線を道路に移し、停めてある車に意識を留めた。
「光栄ですね」
「それでね、聞いたんだけど。ハズくん故障してるんですって? あ、ごめんなさい。彼には『故障』って言葉は変よね」
「あは、いいですよ。原因不明の傷病ってことで」
「いえいえ、わたしも沢井さんとハズくんの関係って羨ましいから」
 彼女が電話を寄越してくれたことが、本当に神の啓示に思えてくる。今なら頼みごとをしても、あっさり了解してもらえそうな雰囲気になってきた。
「それなら僕から亜衣子さんにお願いがあるんですけど」
「なあに?」
 艶(つや)めいた声が響く。俺は少し息を吸って、一気に言葉に出した。
「亜衣子さん、『ダッチ』って知ってます? ハズによく似たダッチハズバンドなんですけど、それ借りて欲しいんですよ」
「え? わたしが?」
「もちろん、その場には俺も行きますよ」
「うーん、どうしようかな」
 迷っているような素振りは、おそらくは単なるポーズだ。俺は内心「逃がすか」と思いつつ、声をひそめた。
「これは僕のお客さんからの疑問なんですけど、『ダッチ』と女性が性行為をしている動画を販売しているかもしれない」
 電話の向こう側の人妻が一瞬、絶句する。
「まさか……」
「まさか、ならいいんです。だけど、もしも本当にそうだとしたら犯罪になってしまう。僕だって自分で愉しむだけしかしてない。あくまでも『かもしれない』ことだけど、もし万が一ってこともある。大事(おおごと)になる前に、自分の顧客だけは守りたいんです」
「わかったわ。沢井さん、今晩また電話くれるかしら。今から出かけるから」
「了解しました」
 電話を切って席に戻ると、まり菜がにやにやしている。
「いいね、美人からの電話が絶えなくて」
 思いっきり顔をほころばせて、掌を彼女に向けて上下した。
「きみが一番きれいだよ」
 彼女がテーブルの下で、俺の脚を蹴ってきた。
 
 午後の授業の講堂では、片山が一番前の席にぽつんと座っている。
「なあ、あいつ授業について行けてるのかな」
 隣にいるまり菜に話しかけると、彼女は目を伏せて首を振った。
「わからない。でも、もしも木下さんから教えてもらっていたら別だと思うけど」
「そうか」
 俺たちは気がついてしまっている。この世の中は、誠意が誰にでも通じるほど甘くはない。それぞれの器の似通った者同士でなければ、理解しあったりいたわりあったりするのは困難だ。
 こちらはこちらで理解し合えない側から降りかかる悪意から、身を守らないと。どんなに心配していても、通じ合えなかったら意味がないかもしれないのだから。
 まり菜が特に過度とも言えるお節介を片山にしていたからこそ、こんなことを俺までが考えこんでいるのかもしれないけど。
 一日の授業が終わり、まり菜の家の近くの駅まで送っていった時だ。
「善臣くん」
「なに?」
「もしも莉緒が盗撮動画の販売に関係していたら、退学になっちゃう?」
 こちらを見上げる彼女の眼差しは真剣だった。
「わからん。今の段階じゃ、なんとも言えない。それに俺たちが考えすぎなのかもしれない。今日の時点では、まだ『関係していない可能性』が強いんだぜ? どっちにしろ、おまえはもう片山には関わるな。このあいだみたいに、あからさまな嫌がらせをされるのはイヤだろう?」
「そうね」
 まり菜は、小さなため息をついた。嫌がらせ云々は俺の詭弁にすぎない。
 万が一の時に片山の口から「雛川まり菜」という名前が出てくることを、なによりも恐れているだけだ。しかし、ストレートにそれを伝えたら、俺の恋人は真っ先に反発するだろう。こいつの性格なら、余計にややこしくなる事態に首を突っ込んで行きかねない。
「善臣くん、ありがとう。また明日」
「明日ね」
 改札口を出た彼女の背中を見送った後、携帯電話を取り出して亜衣子さんにリダイヤルをした。
「あら、早かったじゃない」
「もう少し遅い方がよかったですか?」
「大丈夫よ、ちょっと待ってて」
 俺はホームに上がりつつ亜衣子さんと会話を続けた。
「わたしが『ダッチくん』のレンタルを依頼すればいいの? それで、ええと。なんて言うんだっけ、動画を販売? を辞めさせたいのかな、沢井さんは」
「ハメ撮り動画販売の可能性、ですね。僕は冷たいかもしれないけれども、ダッチ製作者の気持ちひとつだと思います。亜衣子さんとは裸の付き合いの仲だから、ぶっちゃけてもいいんですけど」
「どうぞ」
「あちらの考えていることはわからない。僕だけの勘違いかもしれない、だったらそれでいいんです。だけど自分とハズが関係した女の子が、僕たちだけで満足してくれるとは限らない」
「そうね。決まった彼氏がいない女の子がオナニーだけで満足するわけじゃない」
 俺は段々と自分の口調に熱がこもることを感じた。
「そうです。別に借りるのはいい、だけど、万が一にでも俺たちの顧客の裸が売り買いされるのはたまらない。それさえしていなかったらいい。犯罪行為に知らず知らずのうちに顧客が乗せられることになる。それだけ、どうしても確かめたいんです。俺は自分の顧客を守りたい」
 電話口のすぐそばで、亜衣子さんが大きく深呼吸をした音が伝わってくる。軽い咳払いの後、気を取り直したような彼女の言葉が聞こえてきた。
「沢井さんって、独占欲が強いのねえ」
「はは。女の子、みんな可愛いですから」
 思わず頭をかいた。言われたら確かにそうかもしれない。
「わかったわ、協力してあげる。あなた本当に、わたしと一緒にいてくれるのね?」
「ありがとうございます、もちろん一緒に彼らの前に出ることはできませんが」
「しょうがないわねえ、もう」
 やったラッキー。
 小躍りしそうな気持ちで携帯電話を持ちながら、何度も何度も亜衣子さんに頭を下げた。
 その後、二時間ほど経ってから彼女が電話をくれた。彼女は二週間後の日曜午後一時に、ダッチと木下に会える手はずになったと言う。「ダッチ」レンタル客の中にキャンセルが発生したところに、上手く滑り込めたらしい。
「しかし、よく取れましたね。結構な待ち人数なんでしょう?」
 こちらの問いに、亜衣子さんは鈴を転がしたように笑った。
「申込メールに人肌恋しい人妻なんですけど、って目に黒い線を入れて全裸写真を添付したら一発で予約が取れたわよ?」
 絶句する俺に彼女は続けた。
「よくあるんでしょ、写真と実物が違うっていうの」
 ぷっ、と吹き出した俺がおかしかったのか、彼女の笑い声が大きくなった。



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