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魔王に抱かれた私――優美香

魔王に抱かれた私……1

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1、国王の急死


 この世界には、大陸が三つある。
 西の大陸はエディットという国の領土で、東はロードレという国の領土だ。
 東西を挟む青い海の真ん中に、円形の大陸があった。そこを統治している国の名を、ルーンケルンという。

 ルーンケルンは四方を海に囲まれ、幾つかの諸島も有する海洋国家だ。
 国土の大部分が山地で、平地と言える物はごくわずかな海岸だけである。
 海から本土を見れば、港から山の上まで緑が続く美しい国でもある。近づけば近づくほど、緑のグラデーションに見とれてしまう。
 海岸の上方に整然と並ぶ、石造りの民家の屋根の色も集落ごとに統一されている。航海をする者は、その美しさに見惚れるのが常だった。
 視線を、大陸中央に位置する山脈の上に移す。そこに、ひときわ大きく切り開かれた平地がある。
 山頂には、こぢんまりした造りの大理石の王宮があった。国民は山の上にある宮廷の敷地を見るたび、思うのだ。
 国王陛下は、いつも我々を見守っていてくださると。

 王宮の外壁で輝いていた朝露のしずくが、陽の光に照らされて乾きはじめた頃のことだ。

 体調が悪いにも関わらず書類に目を通していた王が机に突っ伏しているのを、臣下のレフティが発見した。
「陛下! デメテール陛下!」
 彼は琥珀色の髪が乱れるのも構わず、デメテールに駆け寄った。扉を開けたままの大声に、そのとき宮中にいた人間すべてが何事かと集まってくる。しかし誰もが、国王とレフティを見比べるだけだ。
 国家元首はがっしりした体躯であり、同じ歳の頃の男性と比べると健康そのものだ。普段はそのような姿の国王が、目を開けたまま机に突っ伏している姿は誰の目から見ても異様に映った。
 国王はまだ寝る予定ではなかったらしく、サックスブルーのシャツを着ていた。少し前の時間、国王にシャツを渡した洗濯係の女性の声がする。
「さきほどはお元気そのものだったのに……」
 この状況を信じろという方が、無理な話かもしれない。レフティだけが振り向き、呆然としている皆を怒鳴りつける。
「おまえたち、なにをしている! 早く魔術師を呼べ! 今すぐにだ!」
「お医者さまではないのですか?」
「医者を呼ぶには遅すぎる!」
 彼は紫紺の眼差しを鋭く光らせた。身長もあり胸板も分厚いレフティが怒鳴ると、ひときわ威圧感を持って声が響く。おろおろするだけの使用人は、開け放した扉の外側に集まっていた。が、何人かが彼の激しい声にはじかれ、あわてて去った。
 ほどなくしてそこには息せき切ったうら若き乙女と、レフティと同じくらいの背丈の痩せた青年が現れる。
「お、お父さま! お父さまっ!」
 漆黒の髪、黒い瞳の乙女が悲鳴に似た声を上げて国王の体に取りすがった。だが、レフティはその体を父の亡き骸から迷うことなく引きはがす。
「なぜですか!」
 美少女は大きな瞳を見開き、悲愴な声を上げた。
「蘇生の術が掛けられるまで、血族であるあなた様が陛下のお体に触れてはなりません。陛下の心が戻ってこられなくなってしまいます」
 彼女は整った赤い唇を震わせて絶句する。レフティはみるみるうちに血の気を失う王女の顔色を見定めたのち、ぴくりと眉を動かす。
 さらに彼は、王女と共に来た痩躯の青年の視線を感じた。レフティはこちらを黒髪で鳶色の瞳の青年の目が、蔑むように見つめていると感じたのだった。思わず刺々しい言葉が口を出る。
「カイン、なにか言いたいことでも?」
 カインは自らの黒髪をかきあげて首を振り、床にへたりこむ王女に近寄って肩に手を置いた。それから、彼女を落ち着つかせるべく静かに話しかける。
「エレーナさま、魔術師の到着を待ちましょう」
「あ……でも……」
 エレーナ王女は、力なくカインを見上げる。だが彼は視線をそらし、レフティに尋ねた。
「間に合いそうか?」
「わからん。魂を呼び戻すには、時間が経ちすぎているもしれない」
「この国の魔術師でも無理か」
「この国の魔術師だからこそ、無理かもしれん」
 カインは強く握りしめた拳から、汗ではないなにかがしたたり落ちることを感じる。彼は言った。
「レフティ、廊下の人払いをしてくれ。そしておまえも王女と一緒に、この部屋から出てくれ」
 カインの押し殺した低い声に、レフティはぎょっとした。
「なぜだ? なにをしようとしている!」
 疑念に満ちた声にカインは微動だにせず、国王の亡き骸を見つめ続ける。
「いいから、わたしの言う通りにしてくれ」
「おまえになにができる!」
 レフティが激しくカインをなじった声が廊下に響き渡る。その時、大きな足音を立てて老いた魔術師がやってきた。
「陛下!」
 オレンジ色のシャツを着た魔術師は、額の汗も拭わずに王の手首から脈をはかった。また、まぶたを押しあげて瞳孔の様子を見た。その間ずっと、王女の視線が魔術師に突き刺さっている。
 彼は眉間に深く皺を寄せ、レフティを見つめ言いよどむ。
 エレーナと、カイン、レフティの眼差しにうながされ、老人はがっくりと肩を落としながら口を開いた。
「時間が経ちすぎています。陛下の魂を元に戻すのは無理です」
 一拍置いて、エレーナの泣きじゃくる声が宮殿中に響き渡った。

 どんなに高名な魔術師でも、魂が離れて何時間か経ってしまった肉体を蘇生させるのは至難の技だ。
 魂が肉体から遊離する現象が「死」である。遊離した直後であれば、魂が霧散する前に魔術の力を借りて「からだ」という器の中に一つ残らず収めることは不可能ではない。
 しかし、死後ある程度の時間が経ち、完全に霧散してしまってから「個人の魂の全部」を再度よりあわせ、からだの中に入れることは熟練した魔術師であっても難しかった。
 この世界で忌み嫌われている呪術師であれば可能なのかもしれない。
 ただ、蘇生させたい人物の魂に、その人物以外の「なにか」の、不純物が混じる危険性も十二分にあった。違う人物の記憶の断片や潜在意識の一端でも混じることは、王位にいる人物の蘇生には許されない。
 まがい物の魂では、器となりうる「からだ」に狂いが生じることになる。また、血のつながった者が亡くなった人間の体に触れることは、蘇生を妨げるとされていた。
 ルーンケルンに呪術師はいない。
 彼らは「祈り」という手段を持ちながら神職にも携わる魔術師にもなれず、他者を僻み、他者を恨むことと、その名の通り「人を呪う」ことだけを生業としていた。
 高潔なデメテール国王は呪術師を嫌い、即位してからは一人残らず国外追放をしていたのである。今や、どこに行っても、彼らはこの世に存在してはいけない者として扱われていた。
 長い年月をかけて呪術師たちのは西の大陸に集まり、そこを拠点に東の国にも名を轟かせていた。そんな時に、国王が彼らを忌み嫌う理由になった事件が起きた。彼らの多くは東で失脚をし、その場で処刑をされている。
 たった一人の娘にさえ話していない、真の「理由」。
 宮中で二人を除いて、それを知る者はいない。




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