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僕の体をレンタルします―優美香

僕の体をレンタルします……7

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第七話・ハズ、デビューします


 長瀬さんに電話を入れる。
「沢井と申します。長瀬桃子さんでしょうか?」
「はい、そうですけど」
 彼女の声が冷たい。きっと警戒しているんだろう。
「ハズのレンタルの件で、お電話いたしました」
「ああ、ハズくんね……!」
 長瀬さんは「ハズ」という言葉を聞いた途端に、声が明るく柔らかい物になった。
「すみません、伺いたいんですけど。ハズくんのレンタルって時間制なのでしょうか?」
 しまった、その辺サイトに書いてなかったな。仕方ない、こっちも率直に言おう。
「あ、あー。そうですね。三時間で一万円くらい? すみません。こういう商売は初めてなんで、慣れてなくって」
 額から汗が出てきた。そんな俺を長瀬さんは明るく笑う。
「お互いに初めて同士、ってことでいいじゃないですか」
 彼女に対して、いい人だなと素直に思った。声だけで判断するのは危険かもしれないけど、先行きは明るいとも感じる。
「長瀬さん、ありがとうございます」
「いえいえ」
「あのですね。ハズに対して他になにかご要望やご質問があれば、今のうちに伺っておきたいんですが」
「今のところは……メールに書かせていただいた程度ですけど」
「わかりました。ええと、今度の日曜日は空いてます? 場所はそちらのご自宅で構いませんか? 俺とハズの二人で行かせていただきたいんですが」
「えっ、二人?」
 彼女が電話口で一瞬たじろぐ雰囲気が伝わる。俺は言った。
「だってハズには交通ルール教えてませんから」
 けらけらと朗らかに笑う声がする。よし、成功だ。畳み掛けるように続けた。
「もちろん、俺は邪魔しませんよ。ハズを連れて行って代金を受け取ったら、その先は桃子さんとハズの時間になりますよ」
「わかったわ。こちらがお願いする立場でもあるし、沢井さんの仰る通りにします。あ、そうだ。少し質問させてもらってもいい?」
「なんでしょう」
「ハズくんって会話できるの?」
「できますよ」
「どれくらい?」
 至極当然な質問だろう。内心、今度サイトの宣伝文句を修正しとかないと……と思いつつ言う。
「簡単な日常会話ならインストールしてあります。ただ、ボキャブラリーはおそらくそれほど多くないと思うんです。人間の子供でも、ボキャブラリーが少なければ少ないほど思考は単純になります。知能は小学一年生程度と考えてくださっても構いません。その代わり、彼のことはユーザーさまに反抗したりするようには作っていません。桃子さんがハズに色々と教えてあげたら、彼はその通り従います。色んなことをハズに教えてあげてください」
「なるほどねぇ……」
 桃子さんの感心したような納得してくれたような、ため息混じりの声がする。一晩中、考えていたハズの「肝」になる部分の説明だ。
 それから彼女の住所を聞き、訪問日時を決めた。あ、俺も言い忘れてたことがあったな。
「俺からも、桃子さんにお願いがあるんです」
「はい」
「ユーザーさまの感想を、必ず後からメールで送っていただきたいんです。どんな厳しい感想でもいいです、よろしくお願いいたします」
「わかりました、楽しみにしてますね」
 丁寧に礼を言って電話を切る。俺はハズの視線に気がついた。なんとなく不安そうに見えるんだけど。
「ハズ、初仕事だよ。今度の日曜日」
 彼は俺を見つめたまま、肩から力を抜いて笑った。
「不安がらなくていいよ、柚希と似たようなものだからさ」
「はい」
 この子を作っている時にリサーチするつもりで、色んなサイトを見た。
 俺の心に強く残ったのは、ラブドールの購買者が「粗末に扱うと悲しそうな顔になるし、頭を撫でてやったりすると嬉しそうにする」とおしなべて言っていることだった。
 それって、本当にそうかもしれないと思い始めている。
 切り花だって毎日「きれいだよ」と話しかけてやると、水切りしていなくても長持ちすると言うもんね。
 ハズは快・不快をあまり感じないようにしている。それに、よほどのことがない限り感情を顔に出さないようにもしている。レンタル先の相手によって対応が変わったら大変だ。
 俺と妹はハズのことを自分たちの子供のように接していた。彼にはそれが自然に伝わるのか、素直に感情を表してくれる。
 約束の日曜日が来た。俺はハズと並んで歩きながら、そう遠くない桃子さんの家まで行く。彼にとってははじめての外出でもある。目に映る全ての光景が新鮮なようで、なにを見るにも興味深そうにしている。
 俺はと言えばモバイルパソコンを入れたバッグを片手に提げていた。やっぱり緊張するなあ。
 小奇麗なマンションの一室が、桃子さんの住まいだ。近くでお茶でも飲みながら、待機するとしようかな。
「長瀬」と書かれたプレートのドアの前は、きれいに掃かれていた。インターフォンを鳴らすと、明るい声が返ってくる。
「はい」
「沢井です。ハズを連れてきました」
「お待ちください」
 ほどなくして、俺たちの目の前のドアが開いた。




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